認知症の最新情報(2018年)下半期
ここでは認知症の2018年・下半期の最新情報(ニュース)をまとめています。
【認知症保険に新商品が登場。予防に重点をおく】
認知症になったときの経済的な負担に備える認知症保険で、予防や早期発見に重点をおく新商品が相次いで登場しました。
10月に登場した損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の商品は業界初、軽度認知障害(MCI)と診断されると保険金が受け取れます。MCIを保障の対象とすることで、早めの診断を受ける可能性が高まるのが特徴です。
太陽生命保険も10月に新商品を投入。認知症にならずに過ごせば2年ごとに予防給付金を出します。掛け捨てタイプが多いなか対照的です。
大手生保の第一生命保険の新商品の特徴は、一時給付金の条件は診断と要介護1以上の認定が必要になります。
損害保険会社は認知症になった後のリスクに備える保険に力を入れています。たとえば東京海上日動火災保険は、認知症患者が行方不明になったときの捜索費や電車の運行を妨害したときの賠償費用などをおもな補償対象にします。
【遺伝子解析のゲノム医療で認知症を発見】
国内の患者数が500万人に達する認知症。患者の遺伝情報を手掛かりに認知症の発見や原因の特定、予防、治療などをするゲノム医療が注目されています。
患者の血液を採取し、すべての遺伝情報を解析。若年性認知症の一種に関わる遺伝子で変異をみつけた実例もあります。
今後は認知症に関わる様々な遺伝子が明らかになれば診断の精度向上や創薬につながることが期待されます。
【認知症の45%が一般病院入院時に身体拘束】
認知症の人が病気やケガの治療で一般の病院に入院したさい、45%の人が自由に体を動かせないようにされる身体拘束を受けていました。
身体拘束の方法としては「ベッドから下りられないように柵で囲む」「車イスにベルトなどで固定する」「点滴などのチューブを抜かないようミトン型の手袋をつけた」など。
【助けて!に反応する見守りサービス】
高齢者の遠隔見守りサービスを提供する福岡市のワーコンはNTTドコモ九州支社などと協力し、新たな見守りサービス「おるけん」をはじめます。
高齢者の「助けて」という声にロボットが反応し、看護師が駆けつけます。
【昭文社、地図帳のノウハウで高齢者らの見守り】
観光誌のまっぷるを販売する昭文社は、位置情報を活用した高齢者らの見守り支援サービス「おかえりQR」を開始しました。
消費者がQRコードのついたシールを郵便局で購入。IDやメールアドレスなどをユーザー登録したうえで、高齢者や子供の持ち物に貼ります。
行方不明になると、発見者がQRコードをスマホで読み込むことで家族にメールと発見場所の地図などが伝わります。
【認知症予防もビジネスに】
政府によると2012年に462万人だった65歳以上の認知症患者数は、2025年に675〜730万人まで拡大する見通しで、高齢者の5人に1人が認知症を患う計算です。海外でも増加しており、世界の患者数は30年までに8200万人まで増えるとの予想もあります。
財政健全化で介護報酬が減る可能性が高い介護ビジネス業界。そこで介護大手は認知症を予防する取組みを収益化しようと力をいれはじめました。SOMPOホールディングスは痩身トレーニングで有名なRIZAPと提携。認知機能の低下を防ぐ健康プログラムを共同開発します。
学研HDの傘下にあるメディカル・ケア・サービスは島根大学などと共同で、認知症を早期発見・予防・改善するプログラムを開発しています。AI(人工知能)を使い、軽度認知障害の段階で早期発見します。
【東北大など脳の活動を測定するアプリ開発】
東北大学などが設立したベンチャー企業のニューは、脳の活動を測定できる新サービス「アクティブブレインクラブ」を始めます。脳トレの川島隆太所長が監修。
スマートフォンとタブレット端末のアプリを使い、脳の活動状況を測定し、認知機能の維持・向上を支援します。
週に4〜5日以上、1日10分以上のトレーニングで効果が見込めるといいます。3年間で10万人の利用を目指します。
【新オレンジプランを知っているのは5.8%】
日本医師会総合政策研究機構と太陽生命保険が実施した共同調査によれば、国が策定した認知症対策の国家戦略である「新オレンジプラン」を知っている人はわずか5.8%でした。
【予防のためにも使える認知症保険】
太陽生命は保険で認知症を予防できる「ひまわり認知症予防保険」を発売しました。
加入1年後から2年ごとに予防給付金が受け取れるので、軽度認知障害発症リスク検査や様々な認知症予防のために活用できます。
状態継続日数の要件がなく、所定の認知症と診断された時に保険金を主契約でお支払する生命保険は業界初。
【マックスバリュ東海、高齢者見守りで支援】
マックスバリュ東海は静岡県の三島市や長泉町と高齢者見守りネットワークに関する協定を締結しました。
マックスバリュ東海はネットスーパーやカタログをみながら電話注文、店舗で購入した米や水など重い商品を自宅に届けるサービスを手掛けています。これらの配達時に高齢者への声掛けや見守り。異変を感じた場合は自治体や警察に通報します。
【認知症基本法案】
公明党は、認知症への対策を国の責務と定める認知症施策推進基本法案をまとめました。近く自民党と調整に入り、議員立法で国会提出する方針。はやければ秋に予定する臨時国会での成立をめざします。
この法案のポイントは4つあります。
・国は認知症施策を総合的に策定、実施する責務をもつ
・認知症患者や家族、事業者らの意見を聞き、認知症施策推進基本計画をつくるよう政府に義務づけ
・国や地方自治体は正しい知識の普及や成年後見制度の利用促進、認知症予防の研究開発推進などに取り組む
・9月21日を認知症の日に定める
世界保健機関などは9月21日を世界アルツハイマーデーと定めています。
【ファンケルが香り成分による認知症予防商品を開発中】
すでに脳血流の改善に役立つといわれえるイチョウ葉由来フラボノイド配糖体などを含むサプリメント「記憶サポート」を発売しているファンケル。
同社は加齢にともなう物忘れや認知症の予防の研究と商品の開発に力を入れています。
これまでにテルピネオール、カンファーという香り成分に記憶力に関わる脳の働きを高める可能性があることを発見しています。2017年9月には「1,8シネオール」という香り成分を調合することで、認知症予防も期待できる2種類の香りを開発して日本味と匂学会の大会で発表しました。
【認知症の予防製品など経済産業省が検証へ】
認知症になる高齢者は、高齢者全体の増加率を上回るスピードで増えると見込まれています。2025年には約700万人となり、およそ5人に1人が認知症になるとの推計がでています。
認知症を防ぐとうたわれる製品やサービスはありますが、その効果が見えにくいという難点があります。
そこで経済産業省は認知症の予防に使う製品やサービスの効果を確かめるため、自治体と企業が連携して実証する枠組みをつくります。
それぞれの団体と役割は以下のとおり。
・自治体(住民)
・事業者(事業者)
・経産省、日本医療研究開発機構(自治体と事業者の仲介)
結果を評価する指標をつくるため、経済産業省や厚生労働省などが所管する日本医療研究開発機構(AMED)に有識者会議を設けます。
【アリセプトを発売したエーザイが新たな認知症薬に進展】
世界初のアルツハイマー型認知症薬「アリセプト」を発売した製薬会社のエーザイ。
開発中のアルツハイマー型認知症治療薬「BAN2401」が、中間の臨床試験で認知機能の低下を抑える効果を確認しました。
【高齢者を守るIoTつえが登場】
富士通子会社の富士通九州システムズとオートバックスセブンは、つえの持ち手に装着するソニーの開発したセンサーを試作しました。モノとインターネットがつながるIoT(Internet of Things)技術を活用しています。
杖をもった高齢者が転倒した時や徘徊(はいかい)している時に、あらかじめ登録した家族などに通知します。低電力かつ100キロ以上の距離に情報を送信できるのが特徴。
装置は2019年の7月にもオートバックスセブンの店舗などで販売を始めます。
【認知症予防へリスク因子研究】
国立精神・神経医療研究センターのアンケート調査によれば、自分で風呂に入る、服を着るといった日常活動に支障がでたり、外出して社交性を発揮することがおっくうになることが認知機能の低下に関係するとの研究結果がわかりました。認知症の予防につながる成果としています。
認知機能低下と関係していた項目は
・加齢
・教育年齢の短さ
・自分で風呂に入る、服を着ることへの支障
・前もってスケジュールが調整できない
・糖尿病やガンの既往
・毎日の活動力や周囲への興味の減少
・聴力の損失
・体のどこかの痛み
・人生が空っぽに感じる
でした。
【フランスの保健省が認知症の薬に効果なしと判断を下す】
日本で健康保険が使える薬は、ドネペジル(アリセプト)ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン/リバスタッチ)、メマンチン(メマリーの4種類です。
ところがフランス政府の保健省は、これら4種類の薬について、いろいろな副作用が懸念される一方で、期待するような効果を示すエビデンス(医学的な根拠)が十分に得られなかったとして「医療保険でカバーするのは適切ではない」という判断を下しました。2018年の8月から医療保険を適用しないことを決めました。
日本政府の今後の動きが気になるところです。
【浜松ホトニクス、認知症診断システムをマイクロソフトと連携】
浜松ホトニクスは人工知能(AI)を使った認知症診断システムの研究開発でマイクロソフトと連携します。
浜松ホトニクスがもつPET(陽電子放射断層撮影装置)で撮影した脳の画像を分析し、認知症の兆候を見つけるシステムの開発に活用します。
【超音波でアルツハイマー病を治療。東北大が治験へ】
超音波で脳を刺激すると新たな血管が生まれ、血の流れを良くします。
アルツハイマー病の原因物質の一つとされるアミロイドベータの生成を防ぐ治療法を東北大がみつけました。6月中に治験に入ります。
マウスの実験では、人工的にアルツハイマー病を発症させたものが3か月後でも認知機能を維持していました。
【静岡の鈴与商事、高齢者の見守り事業に参入】
静岡の鈴与商事(すずよ・しょうじ)が高齢者の見守りサービスに参入します。振動を検知するセンサーを設置するため、見守り以外に防犯対策としての利用も可能です。
振動を検知するセンサーをトイレのドアや冷蔵庫のドアに貼れば、振動を一定時間検知しなければ異常と判断し、登録したスマートフォンに通知してくれます。センサーを風呂場や窓に取り付ければ、防犯対策や非常ボタンかわりにもなります。
セット内容は、センサー、センサーの信号を受信してスマホに通知するゲートウェイ、スマホ専用アプリとなっています。価格はセンサーが1台3500円、ゲートウェイが1台5500円(センサー10台まで対応可能)。月額利用料はゲートウェイ1台につき980円。
今後、各地で似たようなサービスが生まれてくるでしょう。
【2017年の認知症行方不明者が15863人と判明】
警察庁のまとめによれば、2017年の1年間に全国の警察に届け出があった行方不明者のうち、認知症が原因だったのは15863人だったことが明らかになりました。
行方不明者数は8万人台と横ばいながら、認知症の人が占める割合も18.7%になっています。
【製薬会社のエーザイ、アメリカに認知症の研究所を開設】
製薬大手のエーザイが、アメリカマサチューセッツ州ケンブリッジに新たな認知症治療薬の創出を目指す研究所を設立すると公表しました。
認知症の原因のひとつとされる免疫異常による神経の炎症を抑える化合物をみつけ、2020年までに臨床試験入りを目指します。
(出典 2018/06/14 日本経済新聞より)
【認知症予防プログラム・シナプソロジーの海外展開が始まる】
フィットネスクラブ大手のルネサンスは、自社開発した認知症予防プログラム「シナプソロジー」の海外展開を始めます。
シナプソロジーは同社が2011年に開発し、ボールを投げながら簡単な計算をする、手足の左右で違う動きをするといった2つのことを同時に行う動きをします。場所を選ばず、狭いスペースでも実施可能で所要時間も10分から20分と手軽に行えます。
シナプソロジーを導入する介護施設では、普段よりも脳を使っている、コミュニケーションが増えた、他の活動にも積極的に参加する人が増えた、などの効果も見られています。
(出典 2018/06/13 日経MJ)
【九州電力が高齢者の見守りサービスのキューオッタバイを共同開発】
九州電力は高齢者福祉施設でIOT(あらゆるものがインターネットにつながる)を活用した見守りサービスを事業者と共同開発。実証実験を始めます。
高齢者の居場所を確認したり、施設から無断で出ていくのを防止する見守りサービスの名は「キューオッタバイ」です。
(出典 2018/06/08 日経MJ)
【厚生労働省、認知症の人の意思決定を支援する指針をまとめる】
2012年に462万人だった認知症患者数は2030年には830万人に増えるとの推計があります。
厚生労働省は、認知症の人の日常生活や社会生活における意思決定を支援するための指針をまとめました。今夏をめどに都道府県などを通じて介護施設や医療機関などに周知します。
意思決定支援に関する指針のポイントは以下の5つ。
・認知症の本人に意思決定能力があるという前提で支援をする
・身ぶりや表情など意思を読み取る努力を最大限に行う
・本人が望むことは「なにをしたい」「どこへいきたい」など開かれた形で聞く
・なるべく本人が慣れた場所で意思決定の支援を行う
・意思決定支援の議論の場には原則本人の参加が望ましい
指針では、本人の意思が他人を害する場合、本人の健康などに重大な影響が生じる場合を除き、本人の意思は尊重されるべきであるとしています。
(出典 2018/06/05 日本経済新聞)
【東京都、ICT活用で認知症の症状を改善する事業をはじめる】
東京都はICT(情報通信技術)を活用して、認知症の症状を改善する事業を2018年度中にはじめます。
東京都医学総合研究所が認知症ケアに実績のあるスウェーデンを参考にプログラムを開発。症状を数値やグラフで可視化し、家族や介護職員などで情報を共有します。
ノウハウを蓄積して症状の改善につなげ、職員や家族の負担を減らします。
(出典 2018/06/01 日経MJ)
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