リンゴの色素ケルセチンには認知症を防ぐ効果がある
認知症になるのが怖い。自分もいつか食事をしたことを忘れてしまうのだろうか。夜中にウロウロと近所を徘徊したり、家族の顔がわからなくなってしまうかもしれない。
近年、認知症に関する研究が進み、認知症も生活習慣病のように生活と密接な関係があることがわかってきました。なかでも運動が効果的なことはわかっています。けれど毎日、運動を続ける自信がない。もっと簡単に予防する方法はないだろうか。
実は、食事の影響も大きいのです。脳血管性認知症だけでなくアルツハイマー病も食事の改善によって予防できるという説が有力になっています。
2006年、米ヴィンダービルト大学医学部による大規模な疫学調査の結果が発表されました。約1800人の日系アメリカ人を対象にした調査によれば、週に3回以上、野菜または果物のジュースを飲んでいる人は、週に1回未満しか飲まなかった人に比べると、アルツハイマー型認知症の発症率が76%も低かったのです。
これは野菜や果物に含まれる抗酸化物質のポリフェノールの働きではないかと考えられています。
そこで、わたしのおススメは皮にたっぷりとポリフェノールが含まれているリンゴです。ここでは、リンゴの健康に役立つ成分や研究の成果についてお教えします。
【リンゴの効能】
米コーネル大学などの研究チームは、毎日1個のリンゴがアルツハイマー型認知症の予防に役立つと報告しています。
米マサチューセッツ大学の研究チームがマウスにリンゴジュースを与えたところ、脳内神経伝達物質のアセチルコリンが増え、記憶力や学習能力が向上した結果がでました。
リンゴは脳内のアセチルコリンの生成を促進し、βアミロイドが脳に蓄積するのを阻害する働きがあることもわかっています。
東洋医学で認められるリンゴの薬効は3つ。まず1つが唾液などの分泌を促進し、肺の機能を整える。2つ目は風邪などで発熱したさいのつらい熱感を冷まします。3つ目は、食欲を促し、二日酔いを解消する効果があります。
【リンゴの栄養素】
リンゴに含まれる主な栄養素は
・ペクチン
・ビタミン
・クエン酸
・りんご酸
・ケルセチン
・カリウム
・リンゴポリフェノール
です。
とくに認知症に関連のありそうな栄養素を以下に挙げます。
>>ケルセチン
認知症を防ぐ効果があることもわかってきたのがケルセチンです。
ケルセチンは、緑茶やリンゴ、トマト、タマネギ、ソバ、ブロッコリーなどに含まれるフラボノイドの一種。フラボノイドはポリフェノールの一種で、天然に存在する有機化合物群の植物色素の総称です。
リンゴのケルセチンは、黄色い色素として含まれています。抗酸化力が強く、血流を改善、動脈硬化をふせいだり、アレルギーを緩和する働きがあります。
>>リンゴポリフェノール
体のサビつきを抑えたり、コレステロール値の低下が期待できるのがリンゴポリフェノールです。
リンゴポリフェノールは強い抗酸化作用だけでなく、脂肪の吸収を阻害したり、内臓脂肪を減らす、動脈硬化の抑制、花粉症などのアレルギー症状を抑制する作用のあることがラットの実験やヒトの臨床試験で判明しています。
リンゴポリフェノールは皮に多く含まれており、皮つきリンゴの抗酸化力は皮なしリンゴの約2倍あり、皮つきリンゴは大腸がんや肝臓がんの発育を有効に阻止するという実験結果もあります。
>>カリウム
リンゴには果物の中でも多くカリウムが含まれています。カリウムの利尿作用は、体内の余分な塩分を排出するため血圧が安定します。
>>ビタミンC
200グラムのリンゴ1個に1日あたりの必要量の1/5が含まれています。
>>ペクチン
リンゴには水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維がバランスよく含まれていて、腸の働きを活性化します。
水溶性食物繊維のペクチンは、腸からの糖質の吸収を遅らせて、食後の血糖値の急激な上昇を防ぎ、体脂肪の蓄積を抑えて肥満を予防します。またペクチンは腸内の善玉菌のエサになって善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。
ペクチンは、消化されないまま大便として排泄されます。このとき腸内の老廃物やコレステロール、有害物、発がん物質などを吸着してくれます。放射性物質のセシウム137と腸と結合して体内への吸収を阻害し、便とともに排出する作用があります。
水溶性食物繊維は腸内で水に溶け、水分を抱き込んで粘り気のあるゼリー状になります。ブドウ糖など糖分の吸収速度を緩やかにして、血糖値の急激な上昇を抑えます。ゼリー状の水溶性食物繊維は、腸内のコレステロールを包み込み、体外に排出します。だから高血圧の抑制と血中コレステロールを低下させるのです。
水溶性なので便秘や下痢にもよい作用を示します。食物繊維はカロリーがなく、便としてそのまま排出されるので、いくら摂取してもカロリー過多になる心配がありません。
おなじ水溶性食物繊維の一種アルギン酸は、便をやわらかくして排便を促すため整腸作用が期待でき、ナトリウムを排出して血圧を下げる働きもします。
ちなみにペクチンが多く含まれるトップ5は、茜、王林、千秋、レッドゴールド、ふじになります。
>>有機酸
リンゴ酸とクエン酸。疲労の原因となる乳酸を減らし、身体のエネルギーをつくります。肩こりや腰痛防止に効果があります。
【リンゴの選び方・効果的な食べ方】
リンゴの旬は秋。色は鮮やかなもの、皮にハリとツヤがあるもの、頭の軸がしっかりしている、白い膜がかかり香りがでている、おしりのくぼみが深くズッシリと重みがあるものを選びます。
名前にサンが付くものは日光を多く浴びているため、通常のリンゴより甘味があります。
ペクチンやポリフェノールは皮に多く含まれています。リンゴの皮を捨てると、レタスなら1個分、納豆なら1パック分の食物繊維を捨てていることになります。活性酸素を除去するポリフェノールやビタミンCも、果実より皮に多く含有しています。
リンゴの皮にはポリフェノールが含まれており、抗酸化作用、創傷治癒作用、抗菌作用があります。だからリンゴは皮をむくと実が酸化して茶色くなります。皮が酸化するのを守っているのです。木になっているリンゴはサルにかじられても皮が張ってきて朽ちることがありません。これが創傷治癒作用です。さらに抗菌作用によって、カビや菌が実の中にはいってきません。
だからリンゴを食べるときは丸かじりがおススメ。ジュースやスープにするときは皮ごと。薄く輪切りにしたり、すりおろせば高齢者でも食べやすくなります。
農薬が心配ならば、軽く水洗いすれば大丈夫。それでも不安なら塩水か中性洗剤で洗います。その理由は農作物の安全基準、農薬基準が非常に厳しくなっているからです。
【皮ごとりんごスープの作り方】
便秘解消、中性脂肪を下げるペクチン。血圧を下げ動脈硬化を防ぐポリフェノール、アトピーや肌荒れを改善するビタミン、血圧を下げるカリウム、そして認知症の予防効果が期待されるケルセチンをふくむリンゴの健康成分を余すことなく摂取できるのが「皮ごとりんごスープ」です。
材料は、りんご1個、水150mg、レモン汁・適量、塩をひとつまみ。
作り方も簡単。リンゴの芯をとって、半分をおろし器ですりおろし、半分はさいの目に切ります。鍋に水とリンゴを入れ、強火にかける。煮立ったら弱火で2分煮る。火を止めたら器に盛り、好みで塩やレモン汁で味を整えてください。
ポリフェノールが多く含まれる皮も丸ごと使うので、健康成分がたっぷりいただけます。スープに溶けだした栄養素もしっかりとれて、体もぽかぽかあたたまりますよ。ぜひ1日1杯の皮ごとりんごスープを毎日の食事に取り入れてください。
【リンゴを食べても太りにくい理由】
リンゴを含む果物のよくある誤解が2つあります。
・果物は太る
・果物の果糖で血糖値が上がる
本当にそうでしょうか。
WHO(世界保健機関)は、1997年に「糖類摂取は肥満を促進するという考えは誤りであり、果糖やショ糖等の糖類が生活習慣病に直接結びつくことはない」という公式見解を発表しています。
文部科学省、厚生労働省、農林水産省の食生活指針でも「果物は野菜と同様に毎日の食生活にとって必需品である」と位置付けています。公益社団法人の日本栄養士会も「果物は糖尿病にとってよくない食品ではなく、むしろ積極的に摂ってよい食品です」と勧めています。
たとえば、血糖値の上がりやすさを示すGI値(グリセミックインデックス)は、ブドウ糖を100とした場合、果物で40、果糖で19と上昇度は低くなっています。
また果物には食物繊維がたっぷりと含まれています。この食物繊維は繊維というくらいで、腸で浄水器におけるフィルター(布)の役目をしてくれます。
ある実験で、食パン1枚とグレープフルーツ半分を同じ人に食べてもらいました。このとき最初に食パンを食べると血糖値が急激に上がりました。そのあとにグレープフルーツを食べても血糖値は上がったままでした。しかし、最初にグレープフルーツを食べたあとに食パンを食べると、血糖値の上昇は緩やかになりました。
これはグレープフルーツに含まれる食物繊維が腸内でフィルターの役目をして、食パンの糖質の吸収をゆっくりした結果です。
パン、ご飯、麺類、ケーキなどを食べるときは、最初に食物繊維たっぷりの果物を食べましょう。
【ジュースにすると栄養や酵素の吸収率があがる】
リンゴの抗酸化物質のポリフェノールは皮に多く含まれています。リンゴを食べるときは丸ごと食べるようにしましょう。わたしがおススメするのはジュースにして飲む方法です。
たとえばリンゴと同じく健康に良いといわれるトマト。トマトが赤くなると医者が青くなるというコトワザが欧米にあるくらいの野菜です。トマトには抗酸化作用が高く、血液をサラサラにするリコピンが多く含まれています。
じつはトマトを生で丸かじりしても、リコピンは果肉や果皮の細胞から離れずに腸でうまく吸収できません。だからトマトを食べるときは、切る、潰す、加熱する、オリーブオイルを加えます。こうすることで、リコピンが身体に吸収されやすくするのです。リコピンは油に溶けやすい性質があります。オリーブオイルとトマトを一緒に摂った場合と、オリーブオイルを使わない場合を比べると、リコピンの吸収率がなんと10倍も違うのです。
リンゴも同じくジューサーでつぶして細胞を均質化することで、酵素・栄養素が酸化せず、より吸収されやすい状態で体内に取り込めます。
消化・吸収される時間も果物をそのまま食べても約3時間かかるところ、ジュースにすれば約15分。トマトのビタミンCを例にすると、そのまま食べる場合とジュースにした場合で、約5倍も摂取量が違います。
ジュースにすれば時間のない朝でもすばやく飲めるし、食欲のない方でも量がとれるのはいいですね。
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