食べたことを忘れた時の対応

食べたことを忘れてしまう、過食の対応

 

【食べたのにすぐ忘れてしまう】

 

 

認知症の人には「過食(たべすぎ)」の時期があります。

 

1日に何度も食事を催促する。夜中に冷蔵庫の中の食品を食べてしまいます。

 

食事をしたばかりなのに「ごはんはまだ?」と要求する。「お腹がすいたから早く注文したい」と言いだすのは、記憶障害(短期記憶)が起きている可能性があります。記憶障害によって、食べたこと自体を忘れてしまうのです。

 

または、脳の満腹中枢が障害されて、お腹がいっぱいなことを認識できないのかもしれません。見当識障害によって、時間の感覚があいまいになって食事の時間がわからない場合もあります。

 

過食は、認知症が発症して5年ほどの軽度から中度によく見られます。

 

 

 

【過食のリスク】

 

 

量の加減がわからない、食欲の制御が働かないため、食べすぎて体重が増えることが気がかりです。糖尿病になる恐れもあります。

 

 

 

【過食で気をつけたい対応】

 

 

短期記憶もしくは脳の満腹中枢が障害されている場合、叱ったり、説明したり、受け流すのは逆効果です。

 

本人にとっては、食べていないことが事実です。満腹中枢に障害がある場合は本当に空腹感があります。

 

事実を否定されれば傷つくし、怒ります。ご飯を食べさせてもらえない・・・と不安な気持ちにもなります。

 

・今、食べたばかりでしょ!と叱る
・30分前に食べたと説明する
・次まで待ってねと受け流す

 

本人は心の中でこう思っています。

 

・催促しないと食べさせてくれない(いらだち、不満)
・ご飯を食べないと死んでしまう(不安)
・みんなで食べて、わたしだけ食べさせないつもりだ(孤独)
・おなかが本当にすいているんだ、食べていないんだ(怒り)

 

 

 

【望ましい対応】

 

 

ストレスや欲求不満が原因の場合もあるため、過食の原因を探ります。部屋の中でじっとしているのが原因であれば、散歩に連れ出し気分転換させます。

 

見当識障害によって時間の感覚が鈍くなっていることもあるので、「朝ごはんですよ」と、時間を意識して本人に伝えます。

 

過食する背景に「食べられなくなる」という不安があります。本人の気持ちを理解しないまま、注意したり、説明しても解決はしません。

 

対応を間違えると、怒ったり、近所を「あいつは食事をくれない」と介護者を批難して回ります。

 

・「わかりました」と、まず肯定する
・「できるまで、これを食べて」とお茶や果物を出すとおさまることも
・食べ終えた食器を出したままにする
・一度に出す食事の量を減らす
・数回に分けて食事を出す
・カロリーの低い、カロリーゼロの食べ物を出す
・お茶を出したり、テレビをつけて本人の関心をそらす
・冷蔵庫に鍵をかけ、低カロリーのゼリーや果物をテーブルに出しておく

 

食べられるのは体力がある証拠です。糖尿病などの心配がなければ、あまり神経質になることはありません。

 

 

 

【過食は長く続かない】

 

 

過食をする認知症の人は、体力と気力があり、動きも活発なことが多く。

 

この時期は、エネルギーの消費も多く、排便も大量です。だから、たくさん食べても太ったり、おなかを壊すこともほとんどありません。

 

認知症が進行すると、食べなくなります。そして、寝たきりになれば食事を飲みこむことも困難になります。食べられなくなるのです。

 

ゆえに過食はある段階の症状であり、ずっと続くものではありません。

 

かといって請われるままに食べ物を出せば、糖尿病などの病気が心配です。

 

 

 

【食卓の雰囲気は明るく】

 

 

食事は楽しく。これが基本です。

 

たとえ食べ方に偏りがあっても、叱らずに見守ります。

 

 

 

【4つの認知症のタイプでわかる行動の理由】

 

 

認知症には大きく分けて4つのタイプがあります。

 

・アルツハイマー型
・血管性認知症
・レビー小体型
・前頭側頭型

 

アルツハイマー型では、食べたことを忘れる、箸の使い方がわからなくなる、といった症状があります。

 

アルツハイマー型の症状は、新しいことを覚えられず、理解力が低下します。比較的、新しい記憶から失われます。だから食事したことを忘れます。

 

前頭側頭型認知症は、満腹中枢が障害されやすく、食欲はきわめて旺盛です。とくに甘いものと味の濃いものが大好き。

 

ただし、食欲が損なわれにくく、美味しく食べられるのはメリットです。

 

末期では体を動かすことも困難になります。少しでも動ける体を維持し、寝たきりの期間を短くするためにも、料理を味わい、よくかんで食べてもらいましょう。

 

 

 

【偏食は認知症のリスクを高める】

 

 

アルツハイマー病の患者には、コレステロール値が高い人や、脂質異常症の人が多くいます。

 

認知症と生活習慣病の関係が数々の研究や実験でわかっています。食事を気にすることが認知症予防の道が開けるのです。

 

甘いものなど好きな物だけ食べる。嫌いな物は一切食べない。このような偏食は認知症にかぎらず、糖尿病や高血圧など別の病気のリスクも高めるので注意が必要です。

 

 

 

【アルツハイマー型、その他の症状と対策】

 

 

>>スプーンひとつで食べられる献立にする

 

アルツハイマー型は認知機能が低下するため、食卓に並ぶ料理を料理と認識できない、箸をどうやって持って、料理を口にどう運べばよいかといった食べ方がわからなくなります。そこで無理して箸を使わず、スプーンひとつで食べられる献立にします。

 

>>食べ物とそうでないものの区別がつかない

 

24時間、見張っていることはできません。異食すると困るものは片づけておきます。

 

>>食べ方を忘れてしまう

 

目の前で見せるように食べる。おいしい!と、少し大げさなくらいの様子で食べる。あーんと口をあけ、「こっち、こっち!」とおねだりする。美味しい食べ物と気づけば、惜しくなって自分で食べることも。

 

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>>>異食の原因と対処法