会話が成立しない。しゃべらなくなった(失語症)
【会話が成立しなくなり、しゃべらなくなってしまった】
これは、認知症の初期からみられる失語(しつご)。いわゆる失語症です。認知症の進行とともに、失語症も進行します。
「あれ」「これ」「それ」などの代名詞が多くなったら、注意が必要です。
包丁を「切るもの」、ボールペンを「書くもの」のように、最初は物の具体的な名前がでてこなくなります。
つぎに「あれ」「それ」といった代名詞の多用が増えます。シャツをズボン、みかんをミンカと言い間違うようになり、やがては語彙が減ります。
相手からかけられた言葉を、そのままおうむ返しすることも。最後は、意味不明な声を発したり、相手の言葉を理解して会話をすることが難しくなります。
ただし、言葉を失っても感情を失ったわけではありません。言葉が伝わらなくても、すぐ反応がなくても、余裕と愛情をもって接しましょう。
【失語症の原因】
失語は、脳の中にある言葉をつかさどる部分が壊れるために起こります。
具体的には、以下のことが難しくなります。
・自分から言葉を発する
・相手の言葉を理解する
・会話を組み立てる
・文章を読む、書く
【失語症の本人の気持ち】
・言いたいことが言えない(情けなさ)
・何も伝わらない(もどかしさ)
・そんな自分にイライラする(怒り)
・悲しい
・こんな自分が情けない(自信を喪失している)
・家族の会話が理解できない
・話しかけられているのに、意味がわからない
・忙しそうな介護者をみて「遠慮して」無口になってしまう
・他人と会話することがストレスになっている
【失語症で気をつけたい対応】
・何?何を言ってるの?はっきり言って!(せかす)
・無視する
・わたしだって忙しいの!(怒る)
・無言や無表情、面倒くさいといった感情をあらわにする
・早口で話す(会話の内容がわからない。会話する気力がなくなる)
認知症であっても、感情は残っています。とくに叱られた、怒られた、馬鹿にされた、という「負の感情」は、いつまでも消えません。本人の心や体調にも悪影響をおよぼします。
自分の伝えたいことが伝わらず、かんしゃくを起こす人もいます。人と会話ができなくなったり、理解ができず、自分の殻に閉じこもってしまう人も。
本人が、おわんを指さして味噌汁のおかわりを要求したのに、黙って味噌汁のおかわりを出すのはいけません。「味噌汁のおかわりですね」と声に出し、味噌汁を差し出します。
【失語症で望ましい対応】
・ゆっくり、ゆったりした気持ちで、笑顔で話を聞く
・ひとつひとつの言葉をはっきりと発音する
・言葉と言葉の間に少し間をおいた話し方を心がける
・行ってもらいたい動作をひとつずつ伝える
・ジェスチャーで示す
・たとえ返事がなくても話しかける
・愛情と尊敬の念をもって、話しかける。子ども扱いをしない
・不安そうにしていたら、笑顔で手を握ったりして安心させる
・肩を抱く
・ほほえむ
・くり返し、語りかける
・介助するときは必ず目をみて、明るい声のトーンで話しかけておこなう
・難聴をうたがう
・話しやすい雰囲気をつくる
・「あれ」「これ」などの指示語の使用を避け、「ボールペン」「財布」など物の名前を言う
・話す機会を増やし、脳と舌を刺激する
会話は脳の活性化に非常に有効なもの。会話量が増えることで、気持ちも元気になります。
高齢者の聴力はだんだんと衰えていきます。家族が難聴であることに気づいていない場合があるので、一度耳鼻科の診察を受けましょう。補聴器の利用で改善することも多くあります。
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