ユマニチュードは認知症患者や高齢者に有効なケア技法

ユマニチュードは認知症患者や高齢者に有効なケア技法

 

無表情で会話もできなかったお年寄りが、笑顔をみせて話すようになった。

 

車いすから立とうともしなかった高齢者が立って歩くようになった。

 

認知症で家族に攻撃的だった患者が素直で大人しくなった。

 

シャワーで身体を洗うと「やめてー!」「なんでこんなことをするの!」と叫んでいた女性が、おとなしく気持ちよさそうにシャワーを浴びるようになった。

 

これらはユマニチュードで介護を受けて、現実に起きたこと。決して魔法を使ったわけではありません。

 

フランスで「人間らしさ」という意味をもつユマニチュードは、認知症患者や高齢者のお世話や介護に有効なコミュニケーション法のひとつ。

 

コミュニケーションとは、言葉や仕草などで相手に意見や気持ちを伝えること。いわゆる技術(わざ)です。

 

フランス国内では600を超える医療現場や介護施設で、ユマニチュードを導入しています。アメリカ、カナダ、ベルギー、ドイツ、スイス、ポルトガル、そして日本でも広がりをみせているユマニチュードの理論や有効性をここでは説明します。

 

ちょっとしたケア(介護や世話)のコツやわかりにくいポイントは動画サイトの「Youtube(ユーチューブ)」やDVDで映像をみることができます。ぜひ参考にしてください。

 

 

 

【ユマニチュードの4つの柱】

 

 

ユマニチュードは介護技術のひとつ。なので、あなたに相手への愛情や気持ちがなくても型から入れます。武道や茶道のように、決められた型から入ることができるのです。

 

どんなに愛情や気持ちがあっても、型ができていなければユマニチュードは効果を発揮しません。

 

ユマニチュードの柱は4つあります。

 

・見る
・話す
・触れる
・立つ(寝たきりにさせない)

 

これらを単独で実行するのではなく「話しかけながら相手に触れる」「目をみながら声をかける」と、つねに2つ以上を組み合わせて行います。

 

>>見る

 

ここで「見る」とは、あなたが相手を見つめることではありません。介護される相手の視線をつかまえることが重要です。意識して相手の視界の中にはいるよう心がけてください。相手の視線があわないときは「わたしの目を見てください」とお願いすることもあります。

 

介護される本人を上から見下ろすと威圧感を与えますし、横からは攻撃的な感じを伝えます。できるだけ同じ目の高さで水平にみつけましょう。自分は対等に接していると相手にも伝わります。

 

後ろから声をかけても相手には聞こえません。気づきません。廊下などで声をかけるときは、一度追い越してから向き直り、時間をかけて近づくようにします。

 

食事のときも近くまで寄って視線をつかみ「ご飯にしましょう」と伝え、目の高さまでスプーンを上げてしっかり食べ物を見せます。そのうえで「美味しそうなお肉ですよー」と声をかけます。

 

>>話す

 

まず相手との関係性(絆)を築きます。いきなり「おむつの交換にきました!」ではなく「○○さんとお話しがしたくて来ました」と伝えます。

 

相手が話してくれないからと、あなたが黙ってしまったら気持ちが伝わることはありません。やさしく、おだやかな声のトーンで話しかけます。大きな声や攻撃的なキツイ声の調子は避けましょう。

 

たとえ相手からの返事がなくても否定的ではなく、介護作業を明るく前向き(ポジティブ)な言葉で実況中継します。動作を言葉にすれば黙ることもなくなります。

 

たとえば「今日のタオルはふかふかで、肌触りが気持ちいいですよ」「いい汗をたくさんかきましたね」「さっぱりして気持ちよかったですね」といった具合です。これをオートフィードバッグと呼びます。

 

>>触れる

 

触れるといっても、いきなり多くの神経が張り巡らされた顔や手などの敏感な場所に触れてはいけません。相手をびっくりさせてしまいます。

 

「これからあなたにとっていいことをします」といった明るく前向きな雰囲気で触れましょう。

 

まずは触られても抵抗の少ない腕や背中などから触れます。触れるときはゆっくり、やさしく、広い面積で触れるようにします。一定の重みをかけて触れます。軽いタッチでは性的な含みをもつことがあります。

 

なでるように触れることで、相手に喜びや慈愛の気持ち、信頼を感じさせます。

 

相手の手に触れるときは、あなたから手の平を上にして両手を差出し、相手が自分から手を載せてくれるのを待つのもユマニチュードの技術のひとつ。

 

触れる行為で気をつけたいのが「手足をつかむ」こと。

 

日常生活で他人にいきなり腕や足をつかまれることはほとんどありません。とくに認知機能が低下している人は「つかむ」という行為に「連行される」「罰を与えられる」などの否定的な感情を覚えるため注意が必要です。

 

つかむのではなく、相手の動こうとする意志を生かして下から支えましょう。

 

ユマニチュードの触れる行為は、決して力づくでは行いません。移動の場合は10歳の子ども以上の力は使わないし、腕など体の一部分だけ動かすさいにも5歳の子ども以上の力は使いません。

 

>>立つ(寝たきりにしない)

 

人間は死ぬまで立って生きることができる。この考えで寝たきりの人や障害のある人への介護に取り組みましょう。手厚いケアで、その人が本来もっている能力を奪ってはいけません。

 

40秒、立っていることができれば立体のケア(お世話)も可能になるうえ、寝たきりも防ぐことが可能になります。

 

ただし長い間、寝たきりだった人を無理やり立たせ、転倒や骨折事故させるようなことだけは避けなければいけません。

 

 

 

【ユマニチュード、5つのステップ】

 

 

ユマニチュードでは、介護の始まりから終わり(出会いから別れ)までを5段階にわけて行うことが具体的に決められています。

 

たとえばノック。介護をする相手の返事を待つ、相手が寝ていたら覚醒するのを待ちます。日常生活で他人の家の玄関をチャイムを鳴らさずにいきなり開けません。それがマナーです。なのに介護現場では、ほとんどが相手の返事を待たずにドアを開けています。そのうえ、いきなり介護を始めるのです。

 

ケアの始まりから終わりまでの5つのステップは

 

・出会いの準備
・ケアの準備
・知覚の連結
・感情の固定
・再会の約束

 

>>出会いの準備

 

あなたが来たことを相手に知らせ、お世話することの予告をします。まず扉をノックすることで、あなたが来たことを相手に知らせます。

 

ノックすることで、中にいる人に誰かが入ってくることを「受け入れるか」「受け入れないか」が選択できることを認識させます。寝ていれば覚醒をうながします。

 

まず3回扉をノック。3秒待つ。3回ノック。3秒待つ。それでも返事がなければ1回ノックしてから「失礼します」と声をかけて部屋に入ります。さらにベッドに近づいてから足元のベッドボードを1回ノックします。

 

>>ケアの準備

 

いきなりケア(お世話)の話をしてはいけません。まず「あなたに会いに来た」ことを伝えます。

 

誰だっていきなり服を脱がされたり、体を触られるのは嫌なこと。相手の反応を待つこと、お世話をする了承を得ることが大切です。

 

正面から近づき、目と目をあわせたら3秒以内に話しはじめます。もしもお世話することを拒否され、3分たってもお世話させてもらえない時は無理強いをせず延期します。ユマニチュードでは、本人が嫌がったら引くことが大切。また戻ってくることを再約束しましょう。

 

>>知覚の連結

 

見る、話す、触れる、のすべてを使って「あなたのことを大切に思っています」と伝えましょう。前向きで明るい言葉だけを使い、腕や足をつかまないようにします。

 

>>感情の固定

 

ここではあなたと楽しい時間を過ごしたことを一緒に振り返ります。

 

恋人同士がデートをして別れるとき、「今日は楽しかった」と過ごした時間を振り返ることで、素晴らしい時間だったことを再確認しますよね。

 

感情にともなう記憶は、認知機能が低下した人にも最後まで残ります。誰かに怒られれば「あの人は怖いひと」「あの人は怒るひと」と、認知症のひとは前に会ったときの感情を覚えています。

 

逆によくされれば、誰だとは覚えていなくても記憶には「優しいひと」「楽しいひと」と残るのです。前に会ったときが楽しければ、次にあったときも、きっと笑ってくれるでしょう。

 

>>再会の約束

 

最後は再会の約束です。また来ることを伝え、次回のお世話につなげます。

 

「また来ます」「また会いましょう」そう伝えても覚えていないかもしれません。それでも自分に優しくしてくれた、楽しい時間を与えてくれた人がまた来てくれるという喜びや期待は記憶に残ります。あなたが行けば、笑顔で迎えてくれます。

 

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